父が守った郵便局を、息子が受け継ぐ ―粟島「漂流郵便局」の今

約7万通の手紙が集まる島 「漂流郵便局」を守る人


宛先のない手紙が届く島

香川・粟島「漂流郵便局」の今

香川県三豊市・詫間町の沖に浮かぶ小さな島、粟島。
須田港から船でおよそ15分。瀬戸内の穏やかな海を渡ると、そこには少しゆっくりとした時間が流れています。

この島にあるのが「漂流郵便局」です。
亡くなった人へ。会えなくなった誰かへ。
もう届けることのできない想いを託すため、人々が宛先のない手紙を送る場所です。

現在も世界中から言葉が届き続けています。


瀬戸内の小さな島に生まれた「手紙の場所」

漂流郵便局は、2013年の瀬戸内国際芸術祭をきっかけに生まれました。
アーティスト久保田沙耶さんによる作品として制作されたものです。

本来は会期終了とともに解体される予定でしたが、島の元郵便局員・中田勝久さんがこの場所を守り続けることを決めました。

それから12年以上。
いまも世界中から手紙が届き続けています。

これまでに集まった手紙は、およそ7万通。
現在も平均して1日15通ほどが、この小さな島へ送られてきます。

宛先のない手紙は、海を越えて粟島へ流れ着き、静かに積み重なっていきます。


父から受け継がれた、静かなバトン

現在、この場所を守っているのは中田達夫さんです。
粟島で生まれ育ち、島を離れて暮らしたのち、約40年ぶりに島へ戻ってきました。

漂流郵便局を長年守ってきたのは、父の中田勝久さん。
郵便局員として島の暮らしを支えながら、この場所を12年間守り続けてきました。

その勝久さんが亡くなったのは、2025年の瀬戸内国際芸術祭・秋会期の最終日。
退院予定日の前日でした。

達夫さんは、父からはっきりと言葉で託されたわけではありません。
けれど、父が大切にしてきたこの場所を、静かに受け継ぐことになりました。


世界から届く、宛先のない言葉

漂流郵便局に届く手紙の多くは、悲しみや孤独、怒りなど、誰にも言えなかった感情です。

手紙を書くという行為は、胸の奥にあった想いを言葉にすること。
返事が届くわけではありませんが、書くことで感情は少し外へ出ていきます。

人口およそ100人の小さな島に、世界中から言葉が流れ着く。
宛先のない手紙たちは、今日も静かに積み重なり続けています。

瀬戸内の海の向こうから届く、たくさんの想い。
その言葉を、この島が静かに受け止めています。


▼漂流郵便局を訪ねた取材記事(全文)はこちらから

この記事は、実際に粟島を訪れた「香川県 三豊市地域おこし協力隊」が作成しています。


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≪漂流郵便局≫
■場所:
香川県三豊市詫間町粟島1317-2(粟島港より徒歩約5分)
営業日:毎週土曜日
営業時間:13:00~16:00
■観覧料:500円